阿含経を旅して

阿含の教えに学ぶ

瞑想をはじめて陥る魔境

瞑想を始めるということは、脳をいじるということでもあります。かき回すといってもいいかもしれません。瞑想によって潜在意識が目覚め始めると、潜在意識に封じ込められていた様々な抑圧意識が出現することがあります。

私の場合は、瞑想をはじめてから、しばらくして金縛りや悪夢にうなされるようになってしまいました。そして、それは瞑想をやめてからもずっとつづきました。長年、非常に苦しめられたのですが、阿含宗でご先祖供養をすることで、すっかりなくなり、安眠できるようになりました。

瞑想が流行すること自体はよいのですが、問題は潜在意識、またもっと深く眠る深層意識に押し込められたトラウマが出現することです。これに対応する具体的な処置はほとんどありません。

天台小止観などの指導書にはとらわれるな、とらわれなければ自然に消えると説かれていますが、本当のトラウマは一度出現したらそんな甘いものではありません。ですから小止観も最後には、善智識に近づけと説くのみであります。

さて、この抑圧意識ですが、『脳と心の革命瞑想』桐山靖雄著では、二種類が挙げられています。

フロイト型(潜在意識の抑圧意識)

⑵ソンディ型(深層意識の抑圧意識)

これらの抑圧意識を解消しないで、瞑想を始めてしまうと、人によっては私のように長年苦しむことになるでしょう。

フロイト型は個人の幼少期に受けたトラウマが原因となるものです。

ソンディ型は自分の誕生する以前、すなわち特定の先祖の欲求が自身の恋愛、友情、病気、死に方まで決定してしまうという理論で、家族的無意識によって自己の運命が支配されてしまうという理論であります。

これらを把握し、どのように解消するのか本書のテーマでもありますが、誤解をさけるため、瞑想を始める前に、ぜひ一読をお勧めいたします。

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追記

現代心理学を代表するリポット・ソンディ博士のこの特定の祖先の抑圧意識が個人の運命を反復させるという理論ですが、じつはジャータカ物語にある釈尊とその従弟、提婆達多の間にも見られます。

釈尊提婆達多の関係は、はるか昔の前世から、だまし討ちに会う釈尊と、だまし討ちにする提婆達多という構図です。提婆達多は生まれ変わっては、同時代に生まれ変わった釈尊をライバル視して、いつも敵対関係になります。もちろん釈尊は菩薩ですから意にも介さず、墓穴を掘るのはいつも提婆達多の方なのです。

この場合の運命の反復現象は、祖先の抑圧ではなく、前世の抑圧意識によるものですが、祖先と前世はどこかで縁があると考えられますし、生まれる以前の深層意識が運命の反復現象をもたらすという点では、ソンディの理論とも一致しています。